事業に使える助成金があれば申請したくありませんか?
しかし、いざキャリアアップ助成金の導入を検討すると様々なコースや受給条件等があり、申請を諦めてしまう企業も一定数いるでしょう。
本記事では、キャリアアップ助成金の対象条件や、メリット・デメリットから、コースごとの助成内容・給付金がまとめてあります。
また、申請手順や注意点も解説しているので、疑問が解消でき、キャリアアップ助成金の全体像がわかるでしょう。
キャリアアップ助成金の、受給対象条件や給付金額等、状況に合った必要な情報を知り、次のステップに進んでいきましょう。
キャリアアップ助成金とは?誰を対象にした助成金?

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キャリアアップ助成金とは?簡単にまとめると、事業主(企業)が従業員のキャリアアップを促進する際に申請可能な助成金です。
非正規雇用で働く人(契約社員・パート・アルバイト等)を正社員に転換させる等の、処遇改善を行った事業主(企業)に対して国が支給します。
キャリアアップ助成金の「対象になる3つの条件」

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キャリアアップ助成金の対象となるためには、特定の要件を満たす必要があります。
また助成金には、いくつかのコースやそれぞれ固有の要件もあるのです。
ここでは共通の主な条件を解説します。
雇用保険適用事業所の事業主である
助成金の財源は雇用保険料の一部で構成されているため、雇用保険の適用事業所となっている事業主が対象です。
キャリアップ計画書の作成と、管轄の労働局へ提出している
助成対象の取組みを実施する前にキャリアアップ計画書の作成を行い、所定の労働局またはハローワークへ届け出を行う必要があります。
就業規則や賃金規定等の整備・改定をしている
正社員化・賃金改定・退職金制度導入等の取り組みを行う場合に、就業規則や賃金規定等の制度整備が必要なケースがあります。
キャリアアップ助成金が支給されない事例

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キャリアアップ助成金の申請には、定められた手順や流れがあります。
この手順等をしっかりと守らない場合は審査が通らず、不正申請とみなされる可能性もあるため、申請時は細心の注意が必要です。
企業側が満たすべき共有要件を満たしていない場合
支給申請日または支給決定時に、雇用保険適用事業所ではなくなっていたり、倒産をしたりしている事業主は対象外となります。
また、キャリアアップ助成金の意図に不相応な経営も支給対象外のため、労働環境や社内規定を改めて見直してみましょう。
申請するコースごとの個別要件を満たしていない場合
全コースに共通する基本的な申請要件に加えて、各コースに定められた個別の要件を、申請前に満たすことが条件となります。
定期的に制度内容の改正もあるため、申請のタイミングに合わせて確認が必要です。
申請手続きに不備があった場合
キャリアアップ助成金の申請にあたり、申請書や添付書類等に不備があった際に、都道府県労働局長から書類の補正や追加書類の提出を求められる場合があります。
期日までに必要な対応をしなければ不支給の対象になります。
キャリアアップ助成金の5つのメリット

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キャリアアップ助成金のメリットがわかると、受給や活用のイメージがしやすくなるでしょう。
ここでは5つのメリットを解説していきます。
受給金額が比較的大きい
キャリアアップ助成金は国から支給される助成金の中でも、受給金額が比較的大きい助成金です。
コース内容と助成の対象者の人数によっては最大1,600万円の受給も可能です。
助成金の使い道が自由
助成金は基本的に使い道の制約がありません。
事業の運転資金や人材育成、設備投資等の企業が必要な用途に応じて活用ができます。
助成金の返還は不要
受給した助成金は基本的には返還が不要です。
不正受給をした場合はペナルティの可能性と返還義務が生じ、5年間は厚生労働省の助成金が申請できなくなります。
人材不足の解消につながる
非正規雇用労働者を正社員化する等の処遇や環境を改善する過程は、既存従業員の定着や新規採用にもプラスの影響をもち、人材不足の解消に繋がっていくでしょう。
対象となる可能性が高い
キャリアアップ助成金は、事業内容や業種に関係なく対象になる可能性が高いです。
多くの企業が課題としている処遇改善に活用しやすい助成金となっています。
キャリアアップ助成金の3つのデメリット

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キャリアアップ助成金のデメリットを3つ紹介します。
しっかりと理解しておくことで、申請・受給する際に不測の事態に備えられます。
導入した規則は廃止が難しい
助成金受給のために一度改善・導入した賃金・賞与・退職金制度等は原則として、その後の廃止や引き下げが困難となります。
人件費の固定化になるリスクがあります。
助成金は課税対象になる
キャリアアップ助成金は、法人税や所得税の課税対象となります。
税負担が増加する可能性があるので注意が必要です。
助成金の申請には時間と手間がかかる
助成金の申請書類の作成や就業規則等の整備、取り組み期間中の記録や管理等の複雑な手続きが必要になります。
申請から受給までに数か月から1年程と、時間がかかるケースが珍しくありません。
キャリアアップ助成金7つの各コース・助成内容一覧

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キャリアアップ助成金の助成金制度は正社員化支援・処遇改善支援に分類され、7つのコースが用意されています。
各コース内容と助成内容の一覧をわかりやすくまとめました。
| 支援区分 | コース名 | 主な取組の内容 |
|---|---|---|
| 正社員化支援 | 正社員化コース | 有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者等を正社員に転換 |
| 障害者正社員化コース | 障害のある有期雇用労働者等を正社員に転換 | |
| 処遇改善支援 | 賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者の賃金規定等を増額改定し、基本給を3%以上昇給させる |
| 賃金規定等共通化コース | 有期雇用労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の賃金規定等を、新たに作成・適用 | |
| 賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者等を対象とした賞与・退職金制度を新たに導入・支給 | |
| 社会保険適用時処遇改善コース | 「年収の壁」対策として、社会保険の適用拡大に伴う労働者の手取り減少を補う取り組み | |
| 短時間労働者労働時間延長コース | 短時間労働者の収書手労働時間を延長し、社会保険に新規加入させる |
キャリアアップ助成金各コース助成額一覧

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キャリアアップ助成金の助成額を、各コースごとに正社員化支援・処遇改善支援の2つにわけてそれぞれまとめました。
企業規模により、助成金額が異なります。対象となる金額を表内からご確認ください。
| 正社員化支援(1人当たりの助成額) | 中小企業 | 大企業 | ||||||||
| 正社員化コース | ー | 重点支援対象者※ | 左記以外 | 重点支援対象者※ | 左記以外 | |||||
| ①有期→正規 | 80万円 | 40万円 | 60万円 | 30万円 | ||||||
| ②無期→正規 | 40万円 | 20万円 | 30万円 | 15万円 | ||||||
| ※重点支援対象者とは、以下1~3のいずれかに該当する者 1.雇入れから3年以上の有期雇用労働者 2.雇入れから3年未満で次のa・bいずれにも該当する有期雇用労働者 a.過去5年間に正規雇用労働者であった期間が1年以下 b.過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない 3.派遣労働者・母子家庭の母等・人材開発支援助成金の特定訓練修了者 | ||||||||||
| 障害者正社員化コース | ①重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者の場合 | |||||||||
| 有期→正規 | 120万円 | 90万円 | ||||||||
| 有期→無期 | 60万円 | 45万円 | ||||||||
| 無期→正規 | 60万円 | 45万円 | ||||||||
| ②重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者以外の場合 | ||||||||||
| 有期→正規 | 90万円 | 67.5万円 | ||||||||
| 有期→無期 | 45万円 | 33万円 | ||||||||
| 無期→正規 | 45万円 | 33万円 | ||||||||
| 処遇改善支援(1人または1事業所当たり) | 中小企業 | 大企業 | ||||||||
| 賃金規定等改定コース | 3%以上4%未満 | 4万円 | 2.6万円 | |||||||
| 4%以上5%未満 | 5万円 | 3.3万円 | ||||||||
| 5%以上6%未満 | 6.5万円 | 4.3万円 | ||||||||
| 6%以上 | 7万円 | 4.6万円 | ||||||||
| 賃金規定等共通化コース | 1事業所当たり | 60万円 | 45万円 | |||||||
| 賞与・退職金制度導入コース | 1事業所当たり | 40万円 | 30万円 | |||||||
| 社会保険適用時処遇改善コース | 手当等支給メニュー | 50万円 | 37.5万円 | |||||||
| 併用メニュー | 50万円 | 37.5万円 | ||||||||
| 労働時間延長メニュー | 30万円 | 22.5万円 | ||||||||
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 1年目 | 労働時間の延長 | 賃金の増加 | 小規模企業 | 中小企業 | 大企業 | ||||
| 5時間以上 | ー | 50万円 | 40万円 | 30万円 | ||||||
| 4時間以上5時間未満 | 5%以上 | |||||||||
| 3時間以上4時間未満 | 10%以上 | |||||||||
| 2時間以上3時間未満 | 15%以上 | |||||||||
| 2年目 | 労働時間をさらに2時間以上延長 | ー | 25万円 | 20万円 | 15万円 | |||||
| ー | 基本給をさらに5%以上増加または昇給、賞与または退職金制度の適用 | |||||||||
キャリアアップ助成金申請手順

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キャリアアップ助成金の申請の流れを解説します。
助成金の申請には事前準備から審査を受けるまでの手順が厳格に決まっているため、慎重に進めましょう。
正社員化支援および処遇改善支援の申請の流れは、基本的に同じです。
キャリアアップ計画の作成および提出
キャリアアップ助成金を活用するには、申請するコースに必要なキャリアアップ計画書を作成し、実施する前日までに所轄の労働局もしくはハローワークへの提出が必要です。
計画書の提出は、郵送や電子申請および窓口への持参により可能です。
就業規則の整備
助成金の対象となる措置(正社員へ転換、賃金規定の改定等)の、整備または改定を行い労働基準監督署に届け出します。
その際に、制度の導入日および支給内容等が未記入のものは支給対象外です。
計画の取り組みを実施
キャリアアップ計画または就業規則等に基づいて、労働者の正社員化や賃金規定の改定等の措置を行います。
賃金の支払いならびに支給申請
措置を実施後は、対象の労働者へ6ヶ月分賃金の支払いをします。
6か月目の賃金支払日の翌日から起算して2か月の期間内に、必要書類を添えて管轄の労働局へ申請します。
審査と受給
提出した書類に基づき審査が行われ、要件を満たしていれば助成金が支給されます。
キャリアアップ助成金申請時の5つの注意点

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キャリアアップ助成金の申請では、対象となる労働者を正社員化したり賃金の改定をしたりしても、要件を満たさなければ受給できない可能性があります。
ここでは申請時の注意点を5つ紹介します。
正社員化・処遇改善の措置前に手続きが必要
キャリアアップ助成金は、対象者を正社員転換したり処遇改善したりする前に、労働組合等と協議したうえで、計画書の作成・届け出をします。
措置後の提出は一切受付られません。
就業規則等へ明記が必要
特定の労働者の処遇の改定だけでは、キャリアアップ助成金の申請に必要な条件は満たせません。
いつ・誰がどのような制度に該当する対象になるのかを、就業規則等に必ず明記してください。
支給申請期間中の手続きが必要
支給申請は、6か月目の賃金支払日の翌日から起算して2か月の期間内に行います。
郵送による提出の場合も、申請先への到着日が期間内必達となるため、十分な余裕を持って手続きをしましょう。
申請後は、さかのぼって訂正不可
助成金の申請後に支給要件に満たないことが判明しても、さかのぼって訂正はできません。
手続きを進めるうえで、助成金申請に詳しい社会保険労務士等の専門家に相談するのもおすすめです。
申請書類には保存期限が設けられている
申請時に提出した書類が審査対象となり、添付資料の差し替えは原則不可になります。
また、申請に必要だった書類や帳簿類は、支給が決定されてから5年間の保存義務が設けられています。
まとめ

参考:写真AC
キャリアアップ助成金は、労働者のキャリアアップを促進するために活用できる企業にとって魅力的な助成金です。正しい活用は企業にとって大きな支援となります。
まずは該当するキャリアアップ助成金の各コースや助成金額の把握をしましょう。
申請には厳格なルールが設けられていますが、正しい手順で準備・申請をすることで、受給の可能性があがります。
必要に応じて専門家への相談等も活用し、キャリアアップ助成金を事業に活かしていきましょう。


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